イワサキ経営スタッフリレーブログ
2021.12.20
移転価格税制について
コロナ禍により国外に関連会社等を設立することが今現状において少なくなっていますが、最近私たちの顧問先である中小企業に当税制による否認事例が増えてきています。その理由として、以前は取引金額の大きい大企業に対して行われるケースがほとんどでしたが、現在は事前確認制度の利用を含め国側の整備がされてきたため、調査の矛先が中小企業に移ってきていると考えられます。ここでは、自分にとってもなじみの薄かった移転価格税制について記述します。
そもそも移転価格税制とは、日本における税収確保を目的とした制度です。つまり、国外にある関連会社等を利用する事で日本の課税所得が少なくなる様な場合には日本にも相当の利益を落としてもらいますよ、というものです。
移転価格税制の対象者・対象取引は外国法人のうち「国外関連者」と呼ばれる関係にある特殊な関係のある法人との取引です。移転価格税制は、価格操作によって所得を一方の国に寄せる行為を禁止することを目的としていますので、持株関係による支配関係に限らず、実質的に支配関係にあり価格をコントロールできる状態であれば、適用されることになりますので、注意が必要です。
また、移転価格税制における重要なポイントである取引価格は「独立企業間価格(独立の第三者間で取引される際に成立すると思われる価格水準)」に引き直します。この独立企業間価格の算定方法について、日本では「OECD移転価格ガイドライン」に基づいて、算定方法が規定されています。
移転価格税制は、海外子会社との取引以外にも、海外子会社に利益を付け替えたり、海外子会社から借入れをしたりする際にも問題となります。国外に関係会社がある場合には、移転価格税制への対策だけでなく、個々の取引についてどこの国がその費用を負担すべきかなども慎重に検討する必要があります。海外子会社の役員を務めている社員の給料や現地法人が負担すべき経費を日本親会社が負担しているケースについて、その費用が否認されるケースも増えています。
私も顧問先の不要な税負担を回避するため、十二分に国外取引に注意して業務に当たりたいと思います。
イワサキ経営グループ 監査部二課 田村圭