イワサキ経営スタッフリレーブログ
2018.03.29
富動産と負動産 ~日宇功太~
昨年(2017年)は新聞、雑誌で「富動産」、「負動産」という文字が急に目につくようになりました。不動産の「不」の文字が「富(とみ)」と「負(まける)」にすり替えられています。初めて目にした際は誤植かと思いましたが、どうやら当て字のようです。入居者がなく荒れ放題になっている空き家の問題や相続人の判明しない土地が増え市町村の固定資産税の請求が困難になっている問題などが報道され、この当て字は不動産をめぐる社会問題を見事に表していると感心しました。
私は不動産の売買仲介・活用、その他社内外のお客様に対する不動産相談サービスを日常業務としておりますが、「負」動産に悩まされている個人のお客様も非常に多いと感じられます。特にアパート経営に悩みを抱えるオーナー様は最近非常に増えております。私が静岡県東部地区で初めて不動産業務を担当した20年程前と比較しますと不動産をめぐる環境は様変わりし、アパートなどの賃貸住宅も建設すれば満室になるという時代は過去のものになっています。沼津市の例を挙げますと現在平均20%くらいの空室があるようです(総務省統計局「住宅・土地統計調査報告」)。
例えばアパート10世帯中2世帯が空室になります。この空室率は新築のアパートなども含まれていますので、築年数の経過したアパートの空室率は20~50%以上になっていることも十分考えられます。一般的に不動産オーナーは金融機関より借り入れを行い、不動産事業を行いますので空室が50%以上(10世帯中5世帯の空室)になると賃料収入と借り入れの返済は逆ザヤになっている可能性が十分にあります。正に所有しているだけで負債が増えてゆく「負」動産です。
静岡県東部でも生産年齢人口が減少し、賃貸入居者層が少なくなるなか、新築のアパート・マンションが次々に供給されています。全国的には金融機関の不動産融資が2016年は12兆円を超え過去最高を記録したとの新聞報道もあります。背景にはやはり相続対策のアパート建設があります。こうした状況を考慮すると相続対策としてのアパート建築は終焉を迎えている可能性があります。相続人である子供や孫への「負」動産とならぬよう、アパート建設に当たっては相続対策上の効果、将来に渡っての収益性を投資家自らが十分な知識を持って判断する必要があります。