イワサキ経営スタッフリレーブログ

2016.08.19

五輪終了後の日本経済に待ち構えるリスク ~勝間田 佳祐~

 2020年の五輪の開催地として東京が選出され、国内はその期待感で盛り上がっています。市場では早くもその経済効果を期待する意見が出ており、株式市場では五輪関連銘柄が物色される場面もあります。さらに五輪開催をデフレ脱却・成長促進の起爆剤として期待する向きもあります。なお、20年東京五輪に関して、東京都では20年までに約3兆円の需要創出、約15万人の雇用増につながる、またはそれを遥かに上回る経済効果を発表しています。

一方で、五輪終了後は景気が悪化する傾向があります。個々の事例を精査すれば、五輪要因だけが景気悪化の原因ではありませんが、競技施設やインフラ整備のための特需が一巡し、五輪関連での海外旅行者も激減するのは不可避です。五輪前の数年間に比べて、開催の翌年の成長率は低い傾向があります。特に新興国では、五輪開催に合わせて、大規模な公共事業が実施されることもあり、その反動が出ています。64年の東京五輪後も例外ではなく、翌65年は「昭和40年不況」「証券不況」などと呼ばれる景気悪化が発生しています。
20年東京五輪の構想には「コンパクトな会場配置」が盛り込まれており、ロンドン五輪と同様、既存の施設を競技会場としています。五輪特需への期待は根強いですが、中長期的な観点から何を優先的に整備すべきかを選別することが必要です。現在アベノミクスは、大幅なデフレギャップを抱えていた日本経済を刺激し、「物価安定下での持続的な成長経路」に回帰させようとしていますが、うまくいけば、高めの成長を数年にわたり達成できることになります。五輪開催までの数年間は一定の特需も発生するでしょう。
問題は、20年から生産人口の減少が加速することで、潜在成長率を一段と下押しする可能性があります。アベノミクスの成功はデフレ長期化によって疲弊しつつあった日本を正常化させますが、潜在成長率と実際の成長率の乖離状態が常態化します。こうした状態が五輪終了後も続くと、国内経済や金融市場に歪みを生じさせるリスクとなりえます。それを回避するために、労働力減少の下でも潜在成長力を維持できる環境整備をしていくことに加え、日銀や政策当局が景気過熱を食い止める必要性があるのかもしれません。20年代には「身の丈」にあった成長を続けられるような政策努力が一段と求められるでしょう。

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