イワサキ経営スタッフリレーブログ
2013.06.20
石炭火力発電の復活 ~宮川 良太~
東日本大震災による電力危機は、今日において、私達の日常生活を脅かす、しかも未解決の大きな課題となっています。原子力発電を継続すべきか、または、それに代わる代替エネルギーの主力を何に求めるのか。残念ながら、現状においては、明確な方針は示されていません。一方、こうした渾沌とした現状の中、既存の石炭火力が注目されだしたのです。
石炭火力の歴史は古く、紀元前3世紀頃の古代ギリシャで利用されていた記録があり、イギリスにおける産業革命においては、石炭が大きな役割を担ったのです。
しかし、その後の石油採掘技術の発展により、発電の燃料が、石炭から石油へ変遷しました。我が国においても、1962年の石油輸入自由化により、火力発電用の燃料の主役が石炭から石油に変わったのです。
そしてさらに、1979年のIEA宣言により、石油火力発電所の新設が原則禁止されたため、燃料の多様化が求められ、火力発電においては、石炭、液化天然ガスの利用。また、火力に代わる原子力発電の利用も拡大されてきました。東日本大震災以前においては、我が国の電気のうち石炭約24%、
液化天然ガス約27%、原子力約31%の比率にてまかなわれていました。
東日本大震災以後、安全基準の見直しにより、ほとんどの原子力発電所が稼働停止の状況です。
2011年12月の発電実績では、原子力発電の割合が1割以下であり、火力発電が8割前後を占めているとのことです。
こうした現状において、このまま火力発電用の石炭利用が拡大しても問題はないのでしょうか。
石炭の燃焼により、硫黄酸化物・窒素酸化物・煤塵が発生します。このことによって、高度成長時代の大気汚染の再来が懸念されますし、京都議定書による温室効果ガスの排出削減義務のメンバーから離脱したことも大きな不安材料です。
一方、前述の懸念に対して、我が国においては、石炭火力の環境対応技術や効果的燃焼方法の開発が進み、大気汚染物質の90%以上を除去できる技術があるという好材料もあります。つまり、環境負荷の低減による環境にやさしい火力発電の登場であり、石炭火力の復活です。
原子力から自然エネルギーへの転換の狭間において、今日の石炭火力に注目したいところです。