イワサキ経営スタッフリレーブログ

2012.05.09

財政再建と福祉業界 ~宮川 良太~

 声高に叫ばれている財政再建ですが、その歳出部分を占める補助金について考えさせられる問題が最近ありました。仕事の関係で保育園のことを調べる機会があり、いくつかの資料によって驚いた現実を知ることになりました。それは、保育士の給与の安さであり、一部の利権構造の存在です。

待機児童が200万人とも言われる状況下において、何故保育園不足が解消されないのか。実は、そこに、保育士の労働環境と賃金の抑制、新規参入を阻む利権構造を垣間見ることができました。昨今、介護従事者の給与改善が若干なされましたが、同じ福祉関係の保育士の給与については、以前から問題視されているにも関わらず、その改善策が施されていません。
衆知のごとく、保育園は「認可保育園」と「無認可保育園」に分けられます。また、認可保育園は「公立保育園」と「私立保育園」に分けられます。公立保育園は市区町村が運営し、私立保育園は社会福祉法人が運営しています。公立保育園に勤務する保育士は、公務員として採用されますので、公務員給与規定に則り一定の給与水準が保証されていますが、私立保育園の場合には、社会福祉法人の理事長の裁量により給与が決定されますので、その理事長の園の運営方針により、給与水準が公立の場合に比べ不安定であるのが実態のようです。
私立認可保育園の場合、補助金によって運営されていますし、保育士の給与もその補助金によって支給されていますので、巷間言われるような低い給与に頭を傾げたくなりますが、実は、そこに補助金の内の人件費に関しての設定額という足かせが、低賃金を招く要因となっているようです。
では、足かせとなっている給与設定額とはどのくらいの給与水準なのか。それは、大卒30歳程度の設定額なのだそうです。つまり、補助金としての運営費は、人件費・事業費・管理費で構成されていますが、そのうちの実際の人件費が前述の人件費の設定額を上回ると他の運営費を食いつぶしてしまいます。ですから、いかに人件費を抑制し他の運営費を有効に使うかが保育園運営の大きな関心事になっているようです。30歳前後の退職勧告が行われ、昇給も低く抑えられている要因がそこにあるのです。
財政再建を考えるうえで、例え利権という壁が福祉業界にあったとしても、未来を支える子供達を保育する現場の保育士が、健全に安心して保育に専念できる労働環境作りが急務かと思われます。

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