イワサキ経営スタッフリレーブログ
2025.01.15
「綿の帝国」から見る資本主義の考察
自分がたまたま見かけたX(旧Twitter)のポストで、アフリカの中でも貧しいとされる地域に服を寄付する行為がいかにその国の経済を壊すかという記事がありました。
安価どころか無償で衣服が供給されてしまう状況において、衣服を生産して売るという経済活動は存在を否定されてしまいます。
そのポストのコメント欄に「綿の帝国」という本が面白いから読んでみてほしいという旨の書き込みがあり、値段を調べたら少々高かったものの興味を惹かれて買いました。
この本は単なる綿花産業の歴史書ではなく、産業革命から始まるグローバル経済の成長や、資本主義の基盤がどのように形成されていったのかを掘り下げて書かれています。
欧米諸国の産業革命による綿業の発展史というよりも、欧米による綿花栽培地域と綿織物産地、そして労働者に対する暴力と収奪の歴史に重きが置かれていて、これを読むことによってなぜ18世紀後半まで綿織物の技術力でイギリスを上回っていたインドが、逆にイギリス産綿織物の市場にされたのかも理解することができます。
収奪、という言葉を別の場所でも聞くことができます。
スウェーデンの王立科学アカデミーが2024年のノーベル経済学賞の受賞者を発表しました。
マサチューセッツ工科大学のダロン・アセモグル教授ら3人の授賞理由は、「『制度がどのように形成され、国家の繁栄に影響を与えるかの研究』を行い、これが法の支配が貧弱な社会や国民を搾取するような制度は成長やより良い変化をもたらさない理由を理解することに役立っている」からとのことです。
その受賞に際して、アセモグル教授は「植民地の場所によって、ヨーロッパ各国はそれぞれ異なる政策をとっていたが、収奪的な社会制度となっていた地域や国が大変貧しくなっていることを発見した。(中略)経済学者は、いわゆる経済と呼ばれる対象だけに分析を限定しがちだが、もっと広く政治体制や社会体制に注目した」と述べています。
資本主義の正解は今後の歴史が証明していくとして、不正解の一つは今までの歴史から収奪的な社会体制が挙げられる、ということを学びました。
イワサキ経営グループ 相続資産税課 堀場竜介