イワサキ経営スタッフリレーブログ
2024.10.07
経営者の認知症対策に「家族信託」
最近は個人の方から「家族信託」について相談を受ける機会が多くありますが、会社の経営者の認知症対策として「家族信託」を活用することも有効な対策の一つです。
2025年には、65歳以上の高齢者のうち5人に1人が認知症になると予測されている中、会社の経営者が認知症を発症すると、事業用の資産を動かすことを制限されたり、株式譲渡が出来なくなったりして、経営の継続自体が難しくなる恐れがあります。
そこで経営者の方への「家族信託」の活用について説明したいと思います。
まず信託契約にて①経営者=委託者、②後継者=受託者、③受益者=経営者として経営者が保有する「株式」に信託を設定すると、配当等を受け取れる「財産権」と、会社に対して株主の権利を行使できる「議決権」に分かれます。
株式を信託することによって、「財産権」を委託者=受益者である経営者に残し、「議決権」を後継者に移すことが出来ます。
ここで「財産権」は経営者が引き続き「受益者」の立場で保有しているので、贈与税も課税されません。さらに経営者に「指図権」設定することで、認知症が発生するまでの間、会社の議決権に対して指図することも出来るので、引続き経営に参加することが可能になるのです。
尚、受益者の死亡により信託契約を終了させ、「帰属権利者」に引き継ぐ場合は、「帰属権利者」に対して相続税が課税されます。
また、受益者の死亡により信託契約を終了させず、受益権として引継ぐ場合は、「第二受益者」に対して相続税が課税されます。
信託契約以外の財産については、遺言があれば遺言に従い、遺言が無ければ相続人全員による遺産分割協議で決めることになります。
特に注意しないといけないのは、信託契約を終了させる場合や、受益者を変更する場合は、信託の終了または変更した月の翌月末日までに「信託に関する受益者別調書」「信託に関する受益者別合計表」を管轄の税務署に提出しなければなりません。
このように「家族信託」は、使い方によっては非常に便利な制度ですが、信託契約には専門的な知識が必要ですし、手続きに手間も掛かりますので、契約を結ぶ際には慎重な判断が求められます。
イワサキ経営グループ 相続資産税課 山田憲義