イワサキ経営スタッフリレーブログ
2024.04.21
育児休業の現状
育休は原則1歳未満の子供を養育するための休業制度です。
法的には労働者が働かない場合、会社は給与を支払う義務がないとされていています。そのため育休中の人の給与は通常支払われないことになります。そのままでは生活が出来なくなるので、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。取得から半年は休業前賃金の7割弱、それ以降は5割が支払われます。
会社員から見るとお金の出どころと金額が変わるだけですが会社からみると支払いがなくなります。その額はどのくらいの規模かというと厚生労働省の雇用保険事業年報を見ると、2022年度の育休取得者は、女性が38万人、男性が10万人であり、それぞれ10年間で1.6倍と28倍に増えており男女合計では2倍です。育児休業給付金額は22年度で約7,000億と10年で2.7倍に増えています。給付額が賃金の5~7割と考えると会社がその人に払っていたはずの額は1兆~1兆4,000憶の試算になり、育休中は厚生年金などの保険料も育休取得者分と会社負担分の両方が免除となります。会社からすると、その人のために払っていた社会保険料分も浮くことになります。企業は確かに、雇用保険の負担を通じて、育児休業給付金の一部を負担しているとはいえ、育休取得者の賃金などで単純に企業の支払いの負担が1兆円以上は軽減されたことになります。
このお金は何処へ行くのでしょう?本来人員の不足が生じており、育休取得者の代替要員の確保のための費用や業務をカバーする同僚への手当などの賄われる財源として活用されるべきでしょうが、現実的には子育て当事者への支援は充実しつつあるものの、同僚への手当は手薄なのです。同僚へしわ寄せがいくことが多いことは、厚生労働省の調査でも8割の企業が代替要因を補充していないということが裏付けています。このままでは、子供のいない社員などは不満が溜まり、離職にも繋がる可能性も充分に考えなければなりません。日本型の雇用もマイナスに働きがちで、育休を取る人がいても「みんなで頑張って乗り切ろう」という雰囲気になりやすいのが日本人的感覚であることも弊害です。
厚生労働省の労働経済の分析によると企業が社員に収益をどれだけ還元しているかの指標に「労働分配率」がありますが主要国に中でも低調です。社員にしっかりどう還元していくか、社員に伝えることでやる気を引き出すことが大切です。
イワサキ経営グループ 取締役 高島正明