イワサキ経営スタッフリレーブログ

2023.07.30

寺院の事業承継問題

 寺院が消滅の危機に晒されている。国立社会保障・人口問題研究所によれば、2040年に約167万人でピークに達するまで死亡数は増え続ける見込みとのこと。多死社会となれば、弔いの機会も増え寺院経営にとっては追い風になるとも思える。しかし、現在仏教界では、「寺院消滅」という言葉が飛び交うほど危機感が広がっている。

背景にあるのは、少子高齢化や人口減少の影響にある。仏教寺院の多くは檀家寺であり、その檀家軒数が減少しているからだ。檀家寺の収入は、葬儀や法事の際に受取るお布施と檀家の年会費にあたる護持費である。檀家数300軒程度であれば、檀家1軒あたり、お布施と護持費で平均4万円得ることができ年間1200万円程度になる。ここから本堂の修繕や墓地の手入れなどの諸経費を差し引いた額が住職の手取り収入となる。ただし住職個人には所得税がかかるため手取りはさらに少なくなり寺院の経営維持は厳しいものとなっている。

多くの寺院は、宗教法人の形式をとっているが、実態としては住職と家族による個人経営である。跡とりが住職となって寺院を引継ぐという世襲制を敷いている。しかしながら未婚、晩婚が進み住職にも子供がいなかったり、いたとしても別の職業を選んだりして跡を継がないケースは多い。このあたりは一般の中小企業の事業承継問題と重複する。浄土宗総合研究所のアンケート調査では、正住職のいる寺院の30.3%には後継者が不在とのことである。これは廃寺までいかずとも、住職のなり手がいない「無住寺院」「兼務寺院」を増やしていくことになる。

寺院経営を維持していくためには、檀家数80軒というのが最低ラインともいわれている。檀家数の減少と後継者不足が、寺院を消滅の道に向かわせることになる。また檀家の減少と並んで深刻なのは僧侶になりたがらない若者も多いという問題もある。経営的に苦境に陥っている寺院の現状を見れば敬遠されるのは当然のことであろう。

身近な寺院の消滅は、信仰心を希薄にし地域コミュニティーを崩壊させ、伝統や地域の習慣、文化をも衰退させていくことになる。  

最近では、墓石業界の方から「墓じまい」による事業再構築の相談を受けることも多くなった。 寺院の存続問題は地域の衰退問題にもつながってくる。一度、自分事として捉えて打開策を考えてみませんか。

イワサキ経営グループ 経営支援課 齊藤直也

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