イワサキ経営スタッフリレーブログ
2023年04月
2023.04.22
人材確保のための賃上げ動向
商工中金が発表した中小企業の賃上げ動向に関する調査によると、2023年に従業員の定例給与・時給を引き上げる予定の企業は、未定やその他を除いて前年並みの72.5%をしめた。平均引き上げ率は1.98%で前年に続き約2%の伸びを維持する見通しであり、人手不足を背景に賃上げに前向きな中小が目立った。
大手企業でも賃上げ機運が高まっている。DMG森精機の森雅彦社長は「欧米に比べて日本人社員の賃金は低すぎる」と説明した上で給与改定に意気込んでいる。また、いすゞ自動車(片山正則社長)やアドバンテスト(吉田芳明社長)も「インフレ分に相当する3-4%の基本給底上げを検討している」と話している。
一方、継続的に賃上げを実施していくには、持続的な企業成長が不可欠であり「賃上げと企業成長をセットで考えなければならない」という声や、「社員数が限られる中で、社員の能力の向上が必要。分厚い教育体制を作り、生産性を高めるような好循環の環境づくりが必要」という声も挙がっている。
政府は個人に着目したリスキリング支援や職務に応じたスキルが評価され賃金に反映される日本型職務給の確立をさせる必要があるのではないだろうか。
賃上げの要求水準について、日本労働組合総連合会の芳野友子会長は「今年はターニングポイントの年。実質賃金を上げ、経済を回していくことが今まで以上に大切だ」と強調しており、一方の日本経済団体連合会の十倉雅和会長も「ベースアップを中心に取り組んでほしい」と訴えている。
ただ、業種によって大手でも業績に差があるほか、原材料高によるコスト上昇に苦しむ中小企業は多く、「インフレ率を超える賃上げ」の実現へのハードルは高い。日本経済研究センターが公表した賃上げ率の民間予想平均は2.85%に留まっている。
物価高騰に加え、賃上げを実施しないと優秀な人材を確保できなくなるとの危機感が背中を押す。また、日本は30年間にわたり賃金上昇が停滞している。この状況を打破し、23年を成長と分配の好循環を生み出すスタート地点にできるかが重要になってくるだろう。まずは、労使が今までの慣例にとらわれず、前向きにオープンな議論をすることが必要だと考える。
イワサキ経営グループ 監査部 渡邉健人
2023.04.09
ベーシックインカムについて
「ベーシックインカム」という言葉を聞いたことがありますか。新型コロナウイルスのパンデミックを機に、耳にすることが増えたかもしれません。
なぜ、今「ベーシックインカム」が注目されているのでしょうか。
「ベーシックインカム」とは、すべての国民に対して無条件で、生活に必要な現金を、生涯給付し続ける制度のことです。英語表記「Basic Income」の頭文字をとって、「BI」と表記されることもあります。
なお、現在世界で「ベーシックインカム」の制度を導入している国はありません。
「ベーシックインカム」の説明を聞いて、生活保護と何が違うと疑問に思った人もいるかもしれません。生活保護は、生活に困窮している人が対象で、自ら申請し、審査を経て必要と判断された場合のみ支給される制度です。つまり、「ベーシックインカム」とは「すべての国民」「無条件」「生涯」という点が異なります。
全国民が無条件に一定額を支給される「ベーシックインカム」。一見素晴らしい制度のように見えますが、なぜ日本を含め、「ベーシックインカム」を導入している国が存在しないのでしょうか。
理由の 1つ目が、財源の確保です。全国民に一定金額を支給し続けるためには、莫大な資金が必要です。一人10万円支給された新型コロナの「特別定額給付金」にかかった事業費は約13兆円。年間で計算すると156兆円が必要になります。財源の確保のために想定される2つ目の理由が、増税です。消費税をはじめとした様々な税金を始め、あらゆる場面で支出が増えることも想定されます。3つ目の理由は、年金等これまでの社会保障が受けられなくなる可能性があります。「ベーシックインカム」を導入することは、これまでの社会保障制度を廃止することを前提としている場合が多いです。そのため、これまで年金を支払ってきたにもかかわらず、受給できなくなる恐れがあります。4つ目の理由が、勤労意欲の減退です。労働量に関係なく一定額が支給されることで、労働に対する意欲がなくなると考えられています。労働者不足を引き起こし、経済が停滞する可能性があります。
新型コロナウイルスのパンデミックによって、「ベーシックインカム」に関する議論は世界中で加速しています。生活に直結する制度であることから、今後も議論の動向に注視していきたいものです。
総合資産部 相続資産税課沼津 雛田 昌孝
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