イワサキ経営スタッフリレーブログ
2021.09.05
脱ハンコは契約書にも有効なのか
政府が「デジタル庁」の新設などを行い、主要な政策の1つとして掲げている行政のデジタル化で、河野太郎票制改革担当大臣は押印の全廃することを2020年11月13日に発表しました。
日本には根強い押印文化がありますが、それによって生産性の低下・ペーパーレスの妨げ・テレワーク導入、定着のハードルとなってしまっているのが現状です。
これだけのデメリットがある押印文化がなぜ未だに残っているのか。
それは、実務上では本人であることの確認と本人の意思確認の方法として重用されてきたためです。
裁判などでも、本人の印章によって押印された書類があることで、立証の負担が軽減されています。
しかし、押印がされているから法的に認められるわけではなく、文書の成立経緯を裏付ける資料などがあり真正な立証ができるのであれば、押印などされていなくても良いのです。
では、表題にもある契約書にもハンコが押印されていなくてもその契約書は有効なのかについてですが、先述した通り「原則押印に法的な定めはない(特別な事項は除きます)」ので、押印のない契約書であっても法的には有効です。
そもそも本人の意思がしっかりと合致していれば契約書の作成も押印も必要な要件とされておらず、口頭でも契約は成立するのです。
賃貸借契約等は最近は減りましたが、以前は口約束で当人たちの話し合いの上、契約が交わされており契約書は存在しませんでした。責任の所在が明確になっていれば、契約書にも領収書や社内文書など多くの書類に押印は必須ではないのです。
しかし、そうはいっても責任の所在や意思確認が不明確になってしまいそうで不安です。
誰が文書の作成者か、文書の成立経緯を裏付ける資料を用意しておくといってもその作った書類にハンコを押してしまいたくなります。今後文書のデジタル化が普及して電子署名や電子認証サービスの活用が進むまでは、従来通りの書面に署名押印をして本人確認と当事者の意思確認を残すのもいいのではないかと私は思いました。
ちなみに、税務関係書類の押印も廃止されています。税務申告書提出の最終的な責任は代表取締役にありますが、会計事務所は提出前にこれまで以上の内容確認を行うことが大事になってきます。