イワサキ経営スタッフリレーブログ

2017.07.24

社会保障の新たな抑制手法 ~鈴木 聡~

  社会保障制度に大きな影響を与える介護保険法の改正案が可決されました。この制度改正を踏まえて、収入の基準とも言える報酬単価は来年4月に改定されます。この報酬、「医療」については「診療報酬」、「介護」については「介護報酬」としてそれぞれ決定されます。基本的に「診療報酬」は2年ごと、「介護報酬」は3年ごとに改定されますが、6年に1回その両方が重なることになります。ダブル改定とも呼ばれるこの改定は社会保障制度全体にとっても大きな影響をもたらしますが、来年の4月改定はこのダブル改定となり大きな節目となります。

 今回、こうした大きな報酬改定を前にして介護保険制度の方向性が示されましたが、限られた財政の中でどのように効果的に制度を維持していくかという工夫がみてとれます。例えば、自治体に対する働きかけなども注目すべき論点です。
 一般的に「健康」であれば「医療」や「介護」に関わることはそれほど多くないはずです。つまり、社会保障費がかからない状況、「医療」「介護」を使わない状況こそが「健康」であるとも言えます。そうした観点に着目し、「医療」「介護」などの社会保障費を使っていない地域を「健康な地域」と捉えます。国の議論では、ビッグデータを活用することで医療費や介護保険の利用状況を把握し、それらを使っていない自治体を「健康な地域」として評価しインセンティブを与えることを示唆しています。これで伸び続ける社会保障費の抑制を計ろうということです。
これまでは、報酬改定による社会保障費の抑制といえば提供するサービスの報酬の上げ下げで事業者に影響を与えてきました。それに対して今回のこの考え方は、自治体、つまり市町村にもその抑制の矛先を向けるということが特徴的です。自治体は、もちろん必要なサービスは提供されるでしょうが、社会保障費に対する判断や扱いによっては財政面にも影響するということで、より慎重な対応が求められることにもなりそうです。
 さて、こうした制度により我々は自己管理が一層大事になってきます。「健康」でないと自らの負担が増加するだけでなく所属する自治体の足を引っ張る!?ことにもなりかねません。言い換えれば、自分の健康が地域のコストに連動することになります。そのことは最終的には、やはり自らのコストとして返ってくることもありえます。これから各地域、各自治体の制度運用のあり方が注目されます。

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