イワサキ経営スタッフリレーブログ
2017.03.03
歳時記経済 ~中西 嘉門~
ここのところ寒い日々が続いております。こちら太平洋側の各地でも降雪などが相次ぎ、ことに最近、都市部において雪による交通のマヒなどで日常生活にさまざまな影響が出ているニュースも散見されます。私も先日山梨へ車で出かけた際に雪に降られ、スタッドレスタイヤの準備をしていなかったため道を進めず、車中で夜を明かすという貴重な経験をしました。改めて季節への備えというのは大切なことであると実感した次第です。
「歳時記経済」という考え方があるそうです。これは、夏は夏らしく暑く、冬は冬らしく寒くというのが経済循環としては望ましい状況であるとの考え方であり、例えば猛暑が続く夏場においては家電や衣料品などの季節用品は仕入れたものが品不足になるほどに売れますし、またこれらのほとんどが値引をせずに販売できるため経済効果としては大きいのです、といった理論だそうです。
無論冬においても同様の状況があることを考えても、確かに真夏や真冬に限らず季節や気候は人々の消費行動の動機付けとなることがままあるように感じます。ある試算によると、東京や大阪で夏に気温が1度上がることで4,600億円の経済効果が見込まれるそうです。人々が暑い、寒いと感じることは前述のようにそのまま衝動的な消費につながるでしょうし、季節感を感じることができるような買い物を消費者自ら行うこともあるでしょう。私が雪道から脱出するためにやむなくタイヤチェーンを購入することとなった事例はあくまでもこの限りではないと思いますが、気候というものは人々の消費行動にある種の強制力を持たせることは間違いないようです。
しかし、気候・天候が経済活動におけるプラスの動機づけであると同時に、近年ではこれらは転じてリスクになることも少なくないと感じます。特に農業や流通業においてはこの傾向は顕著です。誰もが毎日食べるような野菜の価格が天候不順により高騰し、これにより消費者は買い控え、それゆえに販売者も仕入を控える…といったマイナスの経済効果も、近年ではよく聞かれるニュースとなっています。季節感が顕著になることは望ましいことではあるでしょうが、何事も表裏一体。ほどほどであることこそが最上、といったところでしょうか。