イワサキ経営スタッフリレーブログ
2016.01.20
ユニークな海外の税率事情 ~高島 正明~
2015年度の税制改正関連法で、自民、公明、次世代の党などの賛成多数で可決・成立した消費税率10%への引き上げでしたが、景気等の判断により、当初の予定から1年半先送りして2017年4月へ延期することになりました。
その中、自民・公明両党は、食料品などの消費税率を低く抑えるいわゆる「軽減税率」の導入に向けて、委員会を設置し具体的な制度の検討に入っていることは、国民の関心も多いかと思われます。検討委員会では、軽減税率の対象品目を「すべての食料品と飲料」や「米・みそ・しょうゆ」に絞った場合などいくつかのケースでの税収がどの程度減るかを示した試算を基に連日議論されています。世論調査でも8割が軽減税率導入に賛成しているようです。
しかし、財務省、自民党税調、経済界は「対象品目の絞込みが大変」「複数税率だと経理が複雑」など反対・消極的な考えもあるのも現実です。多くの経済学者も高い所得には高税率が適用される所得税に対して、所得に関わらず一律の税率が適用される消費税が逆進的だと否定する声が上がっています。
ここで海外のユニークすぎる税率事情を紹介したいと思います。イギリスでは、標準税率20%、軽減税率0~5%です。5%の主な品目はチャイルドシート・住宅リフォーム、0%は食品、水道料、運賃、障害者用器具、書籍、新聞、雑誌などです。ここでユニークなのがおやつの「クッキー」です。チョコチップが入っているクッキーは非課税、チョコレートがかかったクッキーは課税といったチョコ付きとチョコなしで税率が変わるのは、贅沢品と生活必需品の線引きがそこにあるからなのです。またカナダでは、標準税率10%、軽減税率0%です。主な軽減税率品目は食材(ミルク、ブレッド、野菜など)農産品(穀物、原毛)、処方箋薬、医療機器(補聴器・人口歯)などです。ドーナツはまとめ買いがお得なのです。外食か家で食べるかの違いで税率を区分しているからなのです。ドーナツ5個以内は、外食とみなされ標準税率の10%がかかり、6個以上買うとその場では食べられないとされ、食料品となり軽減税率0%となるのです。
贅沢品と生活必需品の間での軽減税率を設ける国が多い事が伺えます。事業者の導入コスト負担の増や実務家としての申告業務を考えると複雑な心境です。