イワサキ経営スタッフリレーブログ
2015.11.18
移動する人々 ~中西 嘉門~
暑かった夏もいつの間にか終わり、早くも11月になってしまいました。一雨ごとに涼しくなるとはよくいったもので、衣替えを迎えてもまったく暑さを感じない季節になりました。毎年のことながら、こういった四季の移ろいを感じることができるのはとても幸せなことと実感します。
真夏や真冬もいいのですが、こういった季節は旅行に出かけるのがまた格別です。旅行好きにとって、ことに電車の旅は格別の風情があります。かつては車窓を開け、流れる風景のみならず走行風を絶えず肌身に感じることができたものでしたが、今では快適な車内から景色を矢継ぎ早に眺めるのみです。風情が薄まったとは感じますが、それでも電車の旅ならではの情緒は今でも十分感じ取ることができます。
人間は移動する動物であると聞いたことがあります。人間はさまざまな移動手段を獲得することにより、同時に文化・文明の発展も果たしてきました。鉄道敷設や道路整備がなされることにより、沿線に住宅地が分譲され、地価も上昇する。こういったいわゆる「外部性」といったものはもとより、移動時間の短縮は、ことにビジネスの世界においては商圏の拡大をもたらしました。地域性の強さに依るところの大きい私たちの仕事においても、遠方のお客様からご用命をいただく機会も増えてきました。もしかしたら、地域性などといったものは人々の感覚からは薄れつつあるものなのでしょうか?
しかし決してそんなことはないでしょう。どれだけ交通・通信機関が発達しても時間や距離といった感覚が薄らぐといったことはありません。考えてみれば、生まれ育った町に住んでいる人にとっては、ほんの隣町で日常行われることであっても勝手が違うと感じるものです。文化・文明の発展により広い世界を得ながらも小さなコミュニティを大切にする。「移動することに意義を感じる」人間にとっては、そこは矜持なのかもしれません。
季節は変わっても、移動するスピードは刻々と変化しても、人々の生活そのものはそうそう変化するものではないのでしょう。だからこそ地域に生きて、そこに住む人々のさまざまな事情をよくよく考えた上で、最も適した答えを出すことが必要なのでしょう。
開かない車窓越しに流れる風景を眺めていると、そんなことを考えてしまいました。